新橋演舞場に「吉例顔見世歌舞伎」を観に行ってきました。今回は七世尾上梅幸、二世尾上松緑の追善興行とあって、「音羽屋」ゆかりの演目や役者が勢ぞろいで見ごたえがありました。
夜の部に「京鹿子娘道成寺」がかかり、梅幸の孫にあたる菊之介が演じました。これが、とてもよかったです。よくかかる演目なので、いろいろな役者さんが演じているのを見ましたが、私が一番いいと思ったのは故六世歌右衛門の「道成寺」。執念や怨念を感じさせる素晴らしい演技でしたが、今回のはそれとはまた違う、上品で、それでいて芯のある、きりりとした演技で、緊張感が伝わる演技でした。
そもそも「道成寺」とは、安珍・清姫伝説に由来します。「僧の安珍に裏切られた清姫が、蛇に姿を変えて追いかけ、鐘の中に隠れた安珍を鐘ごと焼き殺してしまう」というのがおおまかな筋です。
歌舞伎の「道成寺」はそんなどろどろした感じはなく、舞踊がほとんどなので、この話を知らないとよくわからないかもしれません。長唄に「鐘にうらみは数々ござる~」とあったり、白拍子花子(清姫)が鐘の上に上って見栄をきるところがラストだったりするところに、安珍・清姫伝説を感じさせるぐらいです。
三味線のきかせどころがあったり、舞踊劇としてはよくできていて、役者によって違いがでるので、好きな演目のひとつです。
この「道成寺」、能にも同じ演題があります。ただ、歌舞伎ではよくやる演目ですが、能ではあまりやらないように思います。
能舞台には、この演目だけのために、鐘をつるすフック(のようなもの)がついているそうです。なにやら特別な匂いがします。能の「道成寺」も観てみたいなぁ。