管理人の独り言 le monologue
ルルドの泉で
時々、無性にフランス映画らしいフランス映画が観たくなります。そんなわけで、渋谷のイメージフォーラムでやっている「ルルドの泉で」を観て来ました。
フランス映画らしい映画という点では、期待以上でした。ラストシーンなんてその際たるもの。あの余韻をもたせた終わり方は実にいい。ただ賛否は分かれそうな映画です。こんなまだるっこしいの駄目って人も多いかもしれません。
フランスのピレネー山脈のふもとにある聖地ルルド、そこには「奇跡の水」が湧き出るとされ、毎年多くのキリスト教徒が訪れます。物語は「巡礼ツアーに参加した不治の病におかされているクリスティーヌに奇跡がおこる」というのが大雑把な内容。ただ、「奇跡」というドラマチックな出来事に主体を置くのではなく、「何故私にだけおこった?」「何故自分にはおこらず、彼女に(奇跡)が起こった?」という心の葛藤や、祝福、嫉妬、怖れ、好奇心など、人間の心のうちなるものすべてを凝縮して入れ込んでいるような、そんな映画です。舞台や音楽が宗教的ですが、決して「宗教映画」ではありません。映画をみながらマンウオッチングをしているような気になり、登場人物の微妙に変わる態度や心の動きがとても興味深いです。
二十年以上前に、キリスト教徒でもない私が、この聖地ルルドに行ったことがあります。ボルドーの友達を訪ねたときに、「せっかく来たんだから「奇跡の水」が湧いているルルドにでも行ってみる?」というくらいの軽いのりで、もちろん聖地だなんて知りませんでした。本当に何もないところに忽然と大聖堂があらわれ、そこには十ヶ国語以上の言葉で(もちろん日本語もありました)で、説明が書かれていたのと、意外に奇跡の泉が小さかったのが印象的だったくらいで、「奇跡の水」すら汲んで帰らなかったという、敬虔なキリスト教信者の方には信じられないくらいの無頓着ぶりでした。あのときもっとルルドのことを知ってたらなぁと今になって思います。
「ルルドの泉で」は10日(金)までやっています。フランス映画好きな方にはおすすめです。
鐘にうらみは~
新橋演舞場に「吉例顔見世歌舞伎」を観に行ってきました。今回は七世尾上梅幸、二世尾上松緑の追善興行とあって、「音羽屋」ゆかりの演目や役者が勢ぞろいで見ごたえがありました。
夜の部に「京鹿子娘道成寺」がかかり、梅幸の孫にあたる菊之介が演じました。これが、とてもよかったです。よくかかる演目なので、いろいろな役者さんが演じているのを見ましたが、私が一番いいと思ったのは故六世歌右衛門の「道成寺」。執念や怨念を感じさせる素晴らしい演技でしたが、今回のはそれとはまた違う、上品で、それでいて芯のある、きりりとした演技で、緊張感が伝わる演技でした。
そもそも「道成寺」とは、安珍・清姫伝説に由来します。「僧の安珍に裏切られた清姫が、蛇に姿を変えて追いかけ、鐘の中に隠れた安珍を鐘ごと焼き殺してしまう」というのがおおまかな筋です。
歌舞伎の「道成寺」はそんなどろどろした感じはなく、舞踊がほとんどなので、この話を知らないとよくわからないかもしれません。長唄に「鐘にうらみは数々ござる~」とあったり、白拍子花子(清姫)が鐘の上に上って見栄をきるところがラストだったりするところに、安珍・清姫伝説を感じさせるぐらいです。
三味線のきかせどころがあったり、舞踊劇としてはよくできていて、役者によって違いがでるので、好きな演目のひとつです。
この「道成寺」、能にも同じ演題があります。ただ、歌舞伎ではよくやる演目ですが、能ではあまりやらないように思います。
能舞台には、この演目だけのために、鐘をつるすフック(のようなもの)がついているそうです。なにやら特別な匂いがします。能の「道成寺」も観てみたいなぁ。
とざい、とぉーざい
「感染症を避けるために、できるだけ人ごみには行かないように」と言われている私は、病院やギャラリー以外はなるべく外出しないようにしています。とはいってもねぇ、ずっと家にいるのもつまらない。そんなんでストレスをためるのはよくないよねーと勝手に決めて、歌舞伎をはじめとする行きたい演劇のチケットは迷わず買うようにしています。
そんなわけで、水曜日に歌舞伎に行ってきました。2階西側(舞台に向かって左手)の席で、宙乗りがある今月は特等席、役者さんが目の前にみえます。染五郎さん迫力あってかっこよかったです。
そして今月は三代目中村又五郎、四代目中村歌昇の襲名披露の口上があります。
「とざい、とぉーざい」ではじまり、役者がずらりと並び、襲名する役者さんを盛り立て、ひとりずつ挨拶をします。その美しい日本語と様式美が、たまらなく好きです。もう口上は何十回もみているし、挨拶の内容もそんなに変わるわけではないのに、見るたびにいいなぁとうっとりしてしまいます。
最後をしめるお決まりの科白「隅から隅までずずずいーーっっと、請い願い申し上げ奉りまする。」や客席からかかる「播磨屋~」という声もいい。日本人に生まれてよかったと思う瞬間です。
この「とざい、とぉーざい」は、文楽の黒子が、人形使いや、浄瑠璃の太夫を紹介するときにも使います。歌舞伎と違ってちょっとめんどくさそうに(いや本当にめんどくさいわけではないんだろうけど)言うのも好きです。漢字で書くと「東西、東西」、舞台を南とみたて、向かって左側を西、右側を東と呼ぶので、客席のお客さん皆という意味があるらしいです。
かくして私のストレスも解消するというわけです。
ペテン・ザ・ペテン
新橋演舞場の「ペテン・ザ・ペテン」を観に行きました。これは、何年か前から2月に上演されている、ラサール石井演出の人情喜劇の新作。主演は中村勘三郎・藤山直美・柄本明のはずだった・・・のですが、中村勘三郎は休演。勘三郎と藤山直美目当てで買ったチケットなのでちょっとがっかりでしたが、面白かったです。
時は戦後4、5年くらい。舞台は東北のとある温泉町。ペテン師2人組がやってくると、そこには別のペテン師が・・・。だましだまされ、笑いあり涙ありの人情喜劇です。ペテン師二人が勘三郎と柄本明のはずでした。このお芝居、もともとは勘三郎がペテン師の芝居を作ってほしいとの要求から書かれたものらしく、それだけに勘三郎を意識しての役どころ、でも、代役のラサール石井、好演してました。ちまちました小悪党の感じがとてもよくでていて、勘三郎とはまた少し違うペテン師になっていました。
藤山直美、渡辺えりの女優陣も、さすがというしかない、ベテランの味です。筋書きとしては単純でばかばかしいとも思えるものですが、芸達者な役者が揃い、笑わせる、泣かせるで、あっという間の3時間でした。
ラサール石井演出のお芝居は、戦後すぐとか明治になったばかりとか、時代の変わり目のごたごたした時期を扱ったものが多いように思います。こういう時期って混沌として、あやしい人いっぱいいたんだろうなぁと思います。でも活気あふれる時代で、後からみると、どこか笑える時代なのかもしれません。
なんにせよ、単純に笑える芝居は素晴らしい。今度は是非勘三郎でみてみたいものです。
青山円形劇場での演劇
表参道のこどもの城の中に、青山円形劇場という小さな劇場があります。文字通り円形の劇場なので、どこからみてもみやすい、席のあたりはずれがありません。小さい劇場なので臨場感があり、舞台が円形なので、あまり舞台に趣向をこらさず、演劇らしい演劇が見られるので、気に入っています。
先日は「今の私をかばんにつめて」というミュージカル。この距離でミュージカルはとても臨場感があって、よかったです。
1ヶ月ほど前に見たのは「叔母との旅」、これがまた演劇らしい演劇で、あとからもじわっとよかったなぁと思う演劇です。
「叔母との旅」は段田安則・浅野和之・高橋克実・鈴木浩介という渋めだが芸達者な4人の男優の共演、出演は男優ばかりですが、配役には女性もたくさんでてきます。簡素なセットに衣装、女性の役をやるからといって、女装するわけではないのに、それでもちゃんと女性にみえます。四方八方から登場する4人、配役も役者の立ち位置もころころかわって、まさに円形の劇場ならではの演出。演劇をみなれていない人はちょっととまどうかもしれないけれど、これぞ演劇っていう舞台でした。
また行きたい劇場です。ただ椅子がもう少しよければなぁ。もうできてからずいぶんたつので、しかたがないかなぁ。



今週の展示は「野の花 山の花」、約40点の水彩画の展示です。ほっとするような優しい空間へ是非お越しください。10月12日まで。
キャンディード
帝国劇場にミュージカル「キャンディード」を見に行きました。
歌舞伎座さよなら公演のせいで、最近は歌舞伎ばかりだったので、ひさびさの歌舞伎以外の演劇、そしてキャンディード役の芸大出身の井上芳雄くんを生でみたいというミーハーさもあり、楽しみにしていました。
ネタばれになってしまうので、あまり詳しくは書けませんが、ストーリーも単純明快、小道具をうまく使っていて、出演者の歌もうまいし、後半ちょっと冗長な感じがありましたが、楽しめました。特に最初から最後まででずっぱりの狂言回し役の市村正親さんが素晴らしく、ベテランがしっかりしていると舞台がよくなるのだなぁとつくづく思う舞台でした。
この日は1階の正面、後ろの方の席でしたが、座席が千鳥配列(たがいちがい)になっていて、前の人がまったく気にならず、後ろの方とは言え、快適な席でした。古い劇場は重みがあるけれど、とかくまわりに来る人の運・不運で見づらくなってしまいがちですが、こういう風に改装してくれると嬉しいです。
歌舞伎もいいけれど、他の演劇もいいなぁ~。というわけで、来週は野田地図「ザ・キャラクター」に行きます。(前からチケットとってたくせに・・・)



今週の展示は、大学生3人の写真展「ろうそくがとけるじかん」。やさしさを感じるモノクロの写真の展示です。真ん中の写真は私のお気に入り。モノクロなのに色を感じます。3日間だけの展示です。6月20日迄。
THIS IS IT
話題の映画、「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」を観てきました。ひとことでいえば「本当にいい映画」です。私はマイケル・ジャクソンのファンというわけではないけれど、ジャンルを問わず超一流のものは、誰がみても素晴らしいのだと思い知らされる映画でした。
幻となったロンドン公演のリハーサルシーンと、そこに使うはずだった映像を組み合わせあるので、こうであったはずのロンドン公演を垣間見ることができます。人も時間も、そしてお金も惜しげもなくつかわれているゴージャスなエンターティメント。冒頭のバックダンサーのオーディションでは、「いくら歌がうまくとも、ダンスがうまくとも、華がないとだめ」と。その華のあるダンサーの前にたつ、大輪の華のマイケル。ダンスも歌も演出も素晴らしいし、極上の贅沢を目の前にしているようでした。
そして全編をつらぬく愛というメッセージ、「私たちの地球は今悲鳴をあげている。だけどまだ間に合うよ。ひとりひとりの力で自然を取り戻そう。それを始めるのは今しかない」というメッセージ、いやもう感動ものでした。
この映像はマイケル個人のものになるはずだったというテロップが流れていたので、もし、無事にツアーが終わったとすると、この映像は日の目をみることはなかったのでしょう。もしかするとプロローグとして、一部つかうことはあっても、このような形で人の目にふれることはなかったはずです。そしてマイケルの死によって、ツアー以上に、これらのメッセージがより多くの人に、より強く伝わった・・・。死をもって、最高のメッセージを伝えたというアイロニーは、「King」と呼ばれた人にふさわしいのかもしれません。
絶対に劇場でみたい映画です。できればもう一度みたいなぁ~



今週の展示は「けやきの会」。絵画教室のみなさんの油絵とスケッチの展示です。力作を是非ごらんください。11月10日迄。
蛮幽鬼
この前の休みの日に、新橋演舞場に「蛮幽鬼(ばんゆうき)」という演劇を見に行きました。最近「う~ん?」という演劇が多かったせいもあり、これは大当たりでした。
物語は島国である鳳来国(ほうらいこく)の留学生4人が果拿(かだ)の国にきて5年、もうすぐ祖国に帰る日がやってこようかという日に、留学生の1人が何者かに殺されてしまうところからはじまります。その罪を仲間から主役である伊達土門(だてどもん)にきせられ、その罪で10年間幽閉されてしまう、やっとの思いで脱獄して、祖国へ帰り復讐を誓う・・・という内容。ネタばれになるので詳しくは書けませんが、このストーリーがわくわくして面白い。
主演が上川隆也、稲森いずみ、堺雅人が実力派、それに早乙女太一が花を添え、脇役も劇団新感線の団員でかためているのでとても見ごたえがあります。映像も駆使した派手な演出で(いのうえひでのり)、3時間飽きさせることがありません。脚本・演出・役者がそろうと、こんなに面白いのねと大満足致しました。
それにしても、早乙女太一君かっこよかったです。姿もいいけど、立ち回りがすばらしい。演技は他の役者さんにまだまだ追いつきませんが、立ち回りは彼が一番でした。
こういうの見ちゃうと、また次々行きたくなってしまうのよねぇ。



今週の展示は「風とアドレス」。テキスタイルの展示です。天井からさげられた作品は圧巻。小品もおしゃれで、ひとつ自分の部屋におきたくなります。是非ご覧下さい。10月13日迄。
ひさびさに立見でも見たいと思った・・・
6月は何かと忙しいので、観劇はどうしても見たいもの1つに絞りました。ところがこれがいまいち、ちょっとはずれだったなぁというお芝居でした。こうなると、他にも観たくなります。
もうひとつ観たかったのが、歌舞伎座の近松門左衛門「女殺油地獄」。片岡仁左衛門の当たり役、しかも「一世一代」なので、多分これが最後。
歌舞伎は、たいてい3つか4つの演目が組み合わさっているのですが、歌舞伎座には「一幕見」というものがあって、一幕だけ見ることができるシステムがあります。座席数は少ないし、今回は時間もないので、立見は必須。歌舞伎座は来年は建替えのため、取り壊されるし、最後の「一幕見」も一興・・・なんてことを思いつつ、行ってしまいましたねぇ。やっぱり。
お芝居自体はとてもよかったです。仁左衛門、かっこいいし、色気・凄みあり、上方のやさ男を演じさせたら、今、この人の右に出る人はいないのではないでしょうか?
ですが、近松はやっぱり人形浄瑠璃のほうがいいなぁという気持ちは消せませんでした。
満足のうちに終わったひさびさの立見でしたが、終わってから気づいた、足のむくみと軽い腰痛。帰りの電車では爆睡。若いときはこんなことなかったのに・・・



今週の展示は「はらだすすむ作陶展-はてなの茶碗」。はてなの茶碗とは?ちょっと不思議でおもしろい陶芸を是非お楽しみください。ちなみに真ん中の「折鶴」も陶芸です。6月23日迄。
海の中の大きな時間の流れ
「海の中の大きな時間の流れ」。海が好きな人にとっては、なんとも魅力的な言葉ではないでしょうか?これは、四谷三丁目の「Roonee」で開催中の池本さやかさんの写真展のタイトルです。
海の中の写真といえば、どこまでも青い海と、いろいろな色の魚たちやサンゴをまず思いうかべますが、この写真展の作品はすべてモノクロ。
モノクロの海中の写真は、以前池本さんのホームページで見て、不思議な魅力があり、実物の写真をみてみたいと思っていました。なので、この展示のお知らせをいただいて、すぐにとんでいきました。
海の中は浅いところは、太陽光に近いので明るいけれど、深くもぐれば、光があまりとどかなくなり、色が薄くなっていきます。まず見えなくなるのが赤い色。(これでも昔はダイバーのはしくれでした。)いわば、モノクロの世界に近くなっていくような気がします。
カラーの海の中の写真もきれいですが、モノクロだけにより、海のおくゆきとかゆったりした時の流れとかを感じ、しばらくそこにたたずんでしまいました。
池本さんは、カラーとモノクロのフイルムを入れたカメラを2台さげて、海に潜るそうです。どのように使いわけるのかは、おそらく彼女だけがもつ感性なのでしょう。
海の好きな方、モノクロ写真が好きなかたにはお勧めです。「海の中の大きな時間の流れ」は明日(10日)まで。